トリプルトラブル【完】

 でもそんなことは知ってか知らずか、美紀は正樹のバレンタインのプレゼントに自分自身を選んでいた。

美紀は正樹に抱いてもらいたかったのだ。

何度も諦めかけた。
何時も問い詰めた。
それでも……


何故だか解らない。
美紀は本当に正樹が好きだと言うことに気付いているのに、戸惑ってもいたのだった。


でも無性に愛しくなる。

兄弟達に幾ら好きだと打ち明けられても、眼中にはないのだ。


全員が入浴したのを確認した後、脱衣場に珠希の愛用していたバスローブを準備した。

誰にも絶対に見られなくなかった。
本当は……
恥ずかしかったのだ。

何度辞めようと思ったことか……

でも正樹を愛する心が上回った。




念入りに身体を洗う。
その後に珠希の愛用していたシャンプー。
何時か自分のお気に入りになっていた、ママの香り。

甘い香りに包まれながら、美紀は大人の女に変身していく。

美紀は自分の中に珠希を見ていた。
憑依ではない。
別の珠希を。


――ママ。パパを頂戴。やっぱり私パパが好き。

美紀はやっと決意した。