「どけどけ!」
玄関で秀樹が直樹を押しのける。
二人の何時も朝の出発風景だった。
勢いよく飛び出した秀樹。
それに続く直樹。
――ガタン、バタン。
秀樹と直樹が慌ただしく自転車で出発して行く。
「自業自得よ!」
美紀は玄関で、二人の背中に声を掛けた。
玄関の横には六畳の和室があり、仏間になっていた。
美紀・秀樹・直樹の三兄弟は同じ日に産まれた三つ子で、その母・珠希の遺影と位牌が仏壇にあった。
「それじゃママ、行って来るね」
美紀は仏壇の前に預けていたテニスラケットをスポーツバッグに入れながら言った。
「パパ戸締まりお願いね」
今度はリビングに向かって声を掛けた。
正樹が其処でトレーニングをしていたからだった。
美紀は自転車の前籠にバックを乗せて出発した。
和室の横から顔を出した正樹は、鍵を掛けるために玄関へとやって来た。
白い花と盛り塩がイヤでも目に入る。
「鬼門の玄関か……」
見る度に呟く。
同じ言葉を何度言ったことか。
その度美紀を、子供達を悲しませてきた。
「自分が運転さえしていれば……」
今日もそれを言う。
子供達の前では絶対言わないと誓った言葉を。
玄関で秀樹が直樹を押しのける。
二人の何時も朝の出発風景だった。
勢いよく飛び出した秀樹。
それに続く直樹。
――ガタン、バタン。
秀樹と直樹が慌ただしく自転車で出発して行く。
「自業自得よ!」
美紀は玄関で、二人の背中に声を掛けた。
玄関の横には六畳の和室があり、仏間になっていた。
美紀・秀樹・直樹の三兄弟は同じ日に産まれた三つ子で、その母・珠希の遺影と位牌が仏壇にあった。
「それじゃママ、行って来るね」
美紀は仏壇の前に預けていたテニスラケットをスポーツバッグに入れながら言った。
「パパ戸締まりお願いね」
今度はリビングに向かって声を掛けた。
正樹が其処でトレーニングをしていたからだった。
美紀は自転車の前籠にバックを乗せて出発した。
和室の横から顔を出した正樹は、鍵を掛けるために玄関へとやって来た。
白い花と盛り塩がイヤでも目に入る。
「鬼門の玄関か……」
見る度に呟く。
同じ言葉を何度言ったことか。
その度美紀を、子供達を悲しませてきた。
「自分が運転さえしていれば……」
今日もそれを言う。
子供達の前では絶対言わないと誓った言葉を。


