報道陣が詰め掛ける中、学校関係者がその対応に追われる。




モニターからは各球団の引き当てた、選手名が次々と発表される。


でも結局どの球団からも、長尾秀樹・直樹兄弟の指名はなかった。


地方の決勝戦で秀樹の2シームが打ち込まれたことが敗因らしかった。

研究されると使い物にならない。
そのように思われてしまったのだった。


今や大リーグではストレートの本流となりつつあるツーシーム。
だからこそ秀樹は、更にその技を極めたいと思っていたのに。




高校に集まった報道陣からもため息が漏れた。

大学に行くか、社会人野球に行くかは、二人の選択に任される事になった。

二人は迷わず社会人野球の道を選んだ。

正樹にこれ以上の負担を掛けたくなかったからだった。

大阪に住む美紀の祖父から、大学の入学金などの援助話もあった。
それでも、それに甘えてはいけない。
秀樹と直樹は自らそう決意した。

大は大学に行き、教師を目指すと言う。

三人はそれぞれの思いで、美紀に告白しようとしていた。


美紀と秀樹、直樹。
大と秀樹、直樹。
正樹と秀樹、直樹。
みなそれぞれのトリプルの中で トラブルを抱えて足掻いていた。
でも全てが恋心だった。
誰にも負けない位に激しい恋の炎に焼かれていたのだった。