トリプルトラブル【完】

 主人は急いでアルバムを開けた。

そこに写っていたのは、結城智恵だった。

驚きながら顔を見合わせる正樹と美紀。

狂ったように泣き出す主人。

美紀は思わず祖父であろう白髪まじりの主人を抱き締めていた。




結城智恵は双子だった。新生児室に忍び込んだ犯人は、それを知らずに、結城智恵だけを誘拐したのだった。




その日の内に資産家宅へ届けられた脅迫状。

中には多額な身の代金の請求が書かれていた。




警察は極秘の内に捜査した。
子供の命を守ろうとしたからだった。

それが更なる悲劇を生むことになったのだった。

1963年に起きた誘拐事件をきっかけに、報道協定が敷かれるようになったからだった。

知人の見舞いを装って、犯人は病院に向かった。

そこで見たものは、資産家の娘が子供を抱いた姿だった。

人違いしたと思い込んだのは当然だった。

自分が疑われない為に、東京駅のコインロッカーに乳児を生きたまま放置したのだった。


新大阪から東京まで……
結城智恵はどのような扱いを受けたのだろう?


正樹はせめて……
その胸に抱かれていたと思いたかった。
例えその人が憎い誘拐犯だったとしても。