トリプルトラブル【完】

 でも本当は……
美紀を見てドキドキしている自分のためだった。

いわゆる照れ隠しだったのだ。




「今起きようとしていたのに」
秀樹はぶつぶつ言いながらやっと体を起こした。
目覚まし時計を見ると、まだ鳴っていなかった。



「な……何なんだよ親父」
それだけ言うのがやっとだった。

秀樹はまだ訳が分からずきょとんとしていた。




「何が、朝練だから、何時もより三十分早く起こせだ」
正樹は秀樹を一括した。

それでもまだ秀樹はポカーンとしていた。


「あっ、そうだった!」

秀樹はやっとことの成り行きに気が付いて、慌てて飛び起きた。


「やべー。目覚ましそのままだった!」

秀樹は急いで直樹を起こそうと二段ベッドのハシゴをよじ登った。


「アホ。もうとっくに起きてるわ」
すかさず言う正樹。


それでも秀樹は、その場にいた。

突然の正樹の襲来に、心が動揺したままだった。


「脅かし過ぎたか?」


「当たり前だよ親父……」

秀樹は頭を掻きながら、正樹の後を追うようにカウンターの席に着いた。