トリプルトラブル【完】

 秀樹は基本を忠実に練習していた。


『正しいフォームで投げてこそ、コントロール出来るんだ』
コーチが常に言っていた。
その通りだと素直に思う。

秀樹はそれだけ成長したと言える。


秀樹は目を閉じた。
直樹の構えるキャッチャーミットを意識するために。


(――リラックスして振りかぶる。

――片足をゆっくりと上げる。

――軸足の延長戦上に頭を乗せるように立つ。

――腰からホームに向けて前方移動させといく。

――ステップしてバックスイングに入る。

――この時、ボールを握っている手の甲を三塁側に向けるような感じで上げていく。

――肩のラインをグランドと水平に保ち、引っ張るようにスイングに入る。

――両肩がホームに対して正面を向くようにリリースする。

――同時に軸足は、ピッチャープレートを強く蹴る。

――肩がグランドに向くように腕をスイングして、フォロースルーへと移行するか……)


秀樹は目を開け、迷わずに直樹に直球を投げた。


「ナイスピッチング!!」
直樹の声が聞こえる。
秀樹はその時、真のエースになりたいと本気で思っていた。