トリプルトラブル【完】

 秀樹の2シームは向かうとこ敵なしに思われた。

ボールを少し浅めの握り、親指は人差し指と中指の間の下におく。

人差し指と中指の間は其処にもう一本指が入る位開けて握り、ボールの縫い目に沿って、第一関節がかかるようにするのが基本だった。


握ったボールの一回転の間に2つの縫い目が見えるのを2シームと言い、少し沈むボールになると言われている。


勿論伸びるボールの4シームも健在だった。
それもそのはずで、この4シームこそがストレートの基本中の基本だったのだ。

2シームがストライプだとしたら、4シームはボーダー柄。
同じストレートでも、握り方一つで全く違う球質になる。
秀樹は真のエースを目指して頑張っていた。


秀樹は新コーチの指導の元でスクスク育っていったのだった。




コーチは秀樹を高くかっていた。
でも、お調子者の秀樹にそのことは言わなかった。

全て女房役の直樹に任せていた。


双子だから。
と、ツーカーの部分に賭けたのだった。


カーブ、シュート、スライダーも一応はマスターしていた。

でも秀樹はそれを使おうとは思わなかった。

豪速球が生かされるのはやはりストレートだと確信していたからだった。