「和束さん。貴方宛てに電話がきてるよ」 大きな声も出していないのに、妙に自分声が響いた気がする。 一斉に何十個もの目が自分へむけられる。 「早く、折り返したほうがいいんじゃないかな? 僕、トイレいってくるから」 受話器を眺めながら言う。 「………早く出なさい!」 椅子に悲鳴を上げさせながら上司は言い放った。 クビ宣言じゃなくてよかった。 「はっはい!」 彼女の返事を背に、ケータイを握りしめながら部屋を出た。