田渕先生がいない教室に居ると、急に葉那の記憶が頭を巡った。
私は怖くなって急いで筆箱からカッターを取り出し、刃を出した。
その瞬間。教室のドアが開いた。
そこにいたのは田渕先生だった。
「おいっ!!何やってんだ!?」
先生はそう怒鳴って私の手首を掴んだ。そして私を壁に押しつけた。
私が目を丸くしていると、先生がそっと呟いた。
「…俺が絆創膏になるって言っただろ?なのに何してんだよ、お前…。
ぶさけんなよ…っ!!」
先生の声が震えてた。
いや、声だけじゃなくて手も震えてた。
私はなんて馬鹿なことをしようとしてたのかと思った。私のことでこんなに泣いてくれる人が目の前に居るのに。
そして私は壁からずれ落ちた。
泣いて、泣きじゃくって、足の傷をこすった。
いくらこすっても消えるはずなんてないのに。
