三階廊下


田渕先生がいない教室に居ると、急に葉那の記憶が頭を巡った。

私は怖くなって急いで筆箱からカッターを取り出し、刃を出した。





その瞬間。教室のドアが開いた。
そこにいたのは田渕先生だった。


「おいっ!!何やってんだ!?」



先生はそう怒鳴って私の手首を掴んだ。そして私を壁に押しつけた。

私が目を丸くしていると、先生がそっと呟いた。






「…俺が絆創膏になるって言っただろ?なのに何してんだよ、お前…。

ぶさけんなよ…っ!!」



先生の声が震えてた。

いや、声だけじゃなくて手も震えてた。


私はなんて馬鹿なことをしようとしてたのかと思った。私のことでこんなに泣いてくれる人が目の前に居るのに。



そして私は壁からずれ落ちた。

泣いて、泣きじゃくって、足の傷をこすった。


いくらこすっても消えるはずなんてないのに。