体育館から離れたのはいいものの
清水君がどこにいるか見当が付かない


短い休み時間はもう残りわずか


まだ理科室に残っている事に賭けて行ってみようか



窓から日が差す廊下の突き当りを曲がろうとしたら


『…っ』

「…!」



私の曲がろうとした方向から
今探していた人物が出てきた

心なしか、表情に焦りの色が含まれているように見える




「…清水君」


私が声をかけると
清水君は盛大にため息をついてそのまましゃがみこんでしまった



「えっ!?ど、どうしたの?」


『あ〜もう、暖(ダン)が紛らわしいメール送るから…』


暖とは須藤君の下の名前である

内容はさっぱりであるが、上から見える清水君の後ろ首にうっすらと汗が見えることに
何かを急いでいた事が覗える



「清水君、私
清水君のことがもっと知りたい
もっと一杯知って…そうしたら


また、告白してもいいですか?」



たぶん、全部を知る事は誰にだって不可能だから

私だけが知ってる清水君のいいところを増やしていきたい


とくとくと速まるこの心音は、決して生きるためだけにあるのではないのだ



『あー…だからなんで
僕の全部を知っても好きでいるって暗に言ってる事になるのに
どうして僕から告白させてくれないのかな
なんのために暖に啖呵切ったと思ってんだよ…』


清水君はなにかをブツブツ呟いていたが
残念か幸いか、天和には全く聞こえていなかった