美月の通う大学は都会の真ん中に位置する、淑女の為の礼儀と人生を学ぶ由緒正しき学園である。
そこを卒業した者は、公務員になるか、華道や茶道の家元、デザイナー、社長…
みな世界を動かす人種へと育っていた。
美月もそこで裁判官になるために、法学部に進んだ一人である。

校門をくぐるや否や、美月の元に女たちが集まる。
「先輩!おはようございます!!」
「美月、おはよう!」
我先にと話をしたがる女たちが美月を取り巻き、あっという間に壁を作る。
「おはよう」
王子様と言わんばかりの人気と、それに答えるビードロの笑顔。
美月の人気は不動のもので、朝からその笑顔に会えれば一日幸せ。
これまた疑う者のいないジンクスまであった。
ファンクラブなるものまで発足されており、日々美月を遠からず近からず取り巻いていた。
本人からしてみればその行動は実に奇怪で、おぞましささえ覚える程だった。