咲は今まで出会ったことのない女性だった。
気品があり正に「高嶺の花」という言葉が似合うようなどこか孤高の存在。
綺麗に緩く巻かれた茶色の髪を揺らしながら、長い脚を運ぶ姿は、いっそ作り物かと思うほどに美しかった。
歳よりもいくらか上積んだような落ち着きと、時折見せる子供のような無邪気な笑顔が酷くマッチしていた。
そしてひけをとらずに、中性的な美しさと長く伸びた手足、切れる頭脳と、落ち着きを含んだ静かな笑顔を持ち合わせた美月。
この二人がセットとなれば目立たないはずがなかった。
もともと社交的な咲と、上辺の付き合いが上手い美月。
一たび二人は学内のアイドルとなった。
女子大ということもあり、口外しているレズビアンもいたし、周りも割と理解に深い人間が多かった。
だが、決して美月は多くの人間には自分の事を語りはしなかった。
そんな二人だったが、お互いに友情以上の好意を抱くことはなかった。
二人は誰にも犯すことのできない『親友』そのもの。
家のことも苦々しい痛みも、美月は表には出さなかった。