二宮咲(にのみや さき)
同じ学部で、入学して一番に友人になった人間だった。
入学したての美月は誰とも行動を共にせず、いつも深い闇の淵で一人腰を下ろしていた。
少しアシンメトリーになった短い髪、一重なのに小さくはない切れ長の目、足が長くスラリとした出で立ち。
綺麗な顔立ちをしているのに、どこか中性的な雰囲気。
その総てが見る者を振り返らせた。
ただ、まとう空気は『絶望』そのもの。
感情のない瞳の持ち主には誰も関わろうとはしなかった。
そんな最中、美月に声をかける女が一人…。
「どうしてそんな顔してるの?」
「…えっ」
あまりにダイレクトな言葉に、美月は思わず拍子抜けした声を出した。
「香田さんて可愛いしカッコいいのに、いつも死んだような目してるよね?」
「はぁ?」
あまりにも失礼な言葉に不快感を露わにした。
瞬間、美月の態度に反して目の前の女は弾けるように笑った。
「あー、そんな顔もできるんだ!感情がないわけじゃないみたいね?」
言いながら女は綺麗な笑顔を見せた。