そんな二人が再婚すると言い出したのは、父が亡くなってわずか1年後のことだった。
笑顔で年甲斐もない恥じらいを含ませながら話す母に、嫌悪感を覚えた。
あんなに大好きだった和豊も、汚らしく見えてどうしようもなかった。
父は母にいつだって春の木漏れ日のように暖かく優しい愛を注ぎ、母もその陽だまりの中で貴方だけだと身を寄せていた。
父の死後、いつか母すらも後を追ってしまうのではないかと気が気ではないほど、切れない愛が二人にはあったはずなのに。
それがどうだ?
たった一年で目の前の『女』は違う男に身を寄せている。
少女のように頬を染め、隣の男を、ましてや義理の弟を父と呼んで欲しいと言葉を流す。
美月には、その総てが悪夢にしか思えなかった。
目を見開き目の前の総てに異議を唱えたいのに、穏やかで幸せそうな目の前の男と女、現実味のない形なき哀しみ。
その総てにはがいじめにされ、とうとう言葉は出てこなかった。
そしてその瞬間、人の愛の儚さを、『女』という生き物への諦めを、若干18歳の胸に押し止めた。
美月はレズビアンだった。
断じて『男』という生き物に、嫌悪感なぞ抱いているわけではなかった。
サバサバとした考え方や、持ち前の美貌で美月には男女問わず友人は多かった。
だが物心ついた時から、恋の甘い対象としてその胸を深く揺るがすのは『女』だった。
笑顔で年甲斐もない恥じらいを含ませながら話す母に、嫌悪感を覚えた。
あんなに大好きだった和豊も、汚らしく見えてどうしようもなかった。
父は母にいつだって春の木漏れ日のように暖かく優しい愛を注ぎ、母もその陽だまりの中で貴方だけだと身を寄せていた。
父の死後、いつか母すらも後を追ってしまうのではないかと気が気ではないほど、切れない愛が二人にはあったはずなのに。
それがどうだ?
たった一年で目の前の『女』は違う男に身を寄せている。
少女のように頬を染め、隣の男を、ましてや義理の弟を父と呼んで欲しいと言葉を流す。
美月には、その総てが悪夢にしか思えなかった。
目を見開き目の前の総てに異議を唱えたいのに、穏やかで幸せそうな目の前の男と女、現実味のない形なき哀しみ。
その総てにはがいじめにされ、とうとう言葉は出てこなかった。
そしてその瞬間、人の愛の儚さを、『女』という生き物への諦めを、若干18歳の胸に押し止めた。
美月はレズビアンだった。
断じて『男』という生き物に、嫌悪感なぞ抱いているわけではなかった。
サバサバとした考え方や、持ち前の美貌で美月には男女問わず友人は多かった。
だが物心ついた時から、恋の甘い対象としてその胸を深く揺るがすのは『女』だった。
