-ドクン-

その名前にひときわ大きく心臓がはねた。
胸の高鳴りを、この人に悟られてはいけない。
平静を装うが故にいつもより饒舌に口が動いた。
「幼い頃に一度遊んだようですが、ほとんど記憶にはありません。
蓮華からの手紙に春からうちの大学に通うので頼む、とありましたが。」
相変わらず視線は逸らされたままだが、いつもよりも口数の多い美月に、和豊は少し嬉しくなった。