大学の門まで苺を送り出すと、美月はそのまま来た道を戻り森に向かった。
自分だけの場所。
誰にも汚されない、誰の目も気にしなくていい場所。
いつものベンチに腰かけると、そっと自分の肩を両手で抱きしめた。
苦しい。
あの子が欲しい…。
泣いて、鳴いて、あの大きな瞳が懇願に涙を溢しながら、自分にすがる様が見たい。
美月はあえて分類するのなら、サディストだった。
女性を愛している時も、自分が下だんて我慢がならない。
いつでも自分の指に、舌に、言葉に、愛撫に、悦びを見いだされてこそ自分の快感なのだ。
だが、苺に感じているのはそんな感情よりも、さらに比べものにならない程の衝動だった。
大切にしたいのに、泣かしたくて、壊したくて、たまらない。
欲しくて、欲しくて、今にも気が狂ってしまいそうだった。
例えるなら、甘くてふわふわしたレースのような。
そんな美しさと可愛らしさを兼ね備えた彼女を、自分のものにしたい。
鎖につないで、足枷をして、鳥籠に閉じ込めて、轡をはめて、誰の目にも触れさせない。
『欲しいなら、可愛くねだってごらん?』
甘く、低く、彼女の耳元で毎日呪文のように囁くのだ。