蓮華の手紙でも幼い頃に会ったことがあると書いてあったし、そのせいだと思った。
でも、それならどうしてこんなに甘くて痛いんだろう?
ずっと会いたかった人に再会できたような甘さと、忘れていたい記憶を呼び覚まされそうな苦さが、混沌と美月を包んだ。
だめだ、困惑が拭えない。
苺に会ってから何かがおかしい…
苺は美月の戸惑いなんて一切感じずに、無邪気な笑顔で話し続ける。
「小さい頃に一度お会いして、その時姉と一緒に遊んで頂いたんです。覚えてないですよね…?」
分かってはいてもどこか寂しそうな笑みを浮かべた。
そんな表情は見ていたくなくて、美月は慌てて話し出した。
「いや、小さかったからはっきりは覚えてないけど、蓮華に聞いてはいたし来年の春からはうちの大学なんだよね?」
珍しく饒舌に口が動く。
きっといつものように言葉少なになると、苺を不安にさせてしまうと思ったから。
嬉しそうにふわっと微笑むと、苺は携帯のディスプレイを気にした。
「あ…すみません。せっかくお話できたのに、今日は帰らないと…。日曜のパーティーあたしも呼んで頂いてるんです。また、お話して頂けますか…?」
控えめにそう言うとゆっくり席を立つ。
美月も同じように立ち上がると、自分でも驚くほど自然に微笑んだ。
「日曜日、楽しみにしてるね?」