美月の通う大学は家から徒歩15分の場所にあった。
小さな頃から成績優秀でどこの大学でも苦労なく入れるほどだった。
現に美月が通う大学は、全国的にも有名な女子大だった。
校風はいかにもお嬢様学校と銘打たれそうなもので、金持ちと教養のある娘はそこに通うのがステータスと言わんばかりだった。
美月は家から近いという理由だけで、この大学を選び見事トップの成績で法学部に進んだ。
そしてそこで、裁判官になるための勉強をしている。
何故その職種を?と問われれば、明確な答えは美月にも出せない。
ただ、言えることがあるとするならば、それは『運命(さだめ)』
そんな言葉がピッタリだろう。
誰かが敷いたレールの上を進むように、美月は何かに寄せられるようにその職業に就こうとしていた。
バスルームで熱いシャワーを頭から浴び、大きな窓の外を見た。
暗く濁った鉛色の空が広がっていた。
同じだった。
美月の心と同じ色をしていた。
父が死んだあの日から、美月の世界は色を失い、原色は消えた。
後に残ったのは深い悲しみと痛み。
そして、憎しみにも似た母への憐み。
祖父が立ち上げた建設会社を、ことさら尽力を注ぎ社長を務めていた父、敏夫。
家族を愛し、社員を敬い、誰にでも惜しみない慈愛を注ぐことができる人。
美月が誰よりも尊敬できる人間だった。
そんな父が突然亡くなったのは二年前の話。
心臓発作を起こし、言葉通りあっけない死だった。
父亡き後、母を絶望の底から救いあげ、愛し、守ったのは美月の実の叔父であり父の弟である和豊だった。
元々敏夫の右腕として専務を務めており、社員からの人望も厚かった和豊が社長に就任するのは、何の違和感もなかった。
献身的に母を支え、仕事にも惜しみない労力を注ぎ、美月にも実の子に向けるほどの曇りない愛情で接した。
美しくまだまだ女盛りの母と、人間の鏡である和豊―。
小さな頃から成績優秀でどこの大学でも苦労なく入れるほどだった。
現に美月が通う大学は、全国的にも有名な女子大だった。
校風はいかにもお嬢様学校と銘打たれそうなもので、金持ちと教養のある娘はそこに通うのがステータスと言わんばかりだった。
美月は家から近いという理由だけで、この大学を選び見事トップの成績で法学部に進んだ。
そしてそこで、裁判官になるための勉強をしている。
何故その職種を?と問われれば、明確な答えは美月にも出せない。
ただ、言えることがあるとするならば、それは『運命(さだめ)』
そんな言葉がピッタリだろう。
誰かが敷いたレールの上を進むように、美月は何かに寄せられるようにその職業に就こうとしていた。
バスルームで熱いシャワーを頭から浴び、大きな窓の外を見た。
暗く濁った鉛色の空が広がっていた。
同じだった。
美月の心と同じ色をしていた。
父が死んだあの日から、美月の世界は色を失い、原色は消えた。
後に残ったのは深い悲しみと痛み。
そして、憎しみにも似た母への憐み。
祖父が立ち上げた建設会社を、ことさら尽力を注ぎ社長を務めていた父、敏夫。
家族を愛し、社員を敬い、誰にでも惜しみない慈愛を注ぐことができる人。
美月が誰よりも尊敬できる人間だった。
そんな父が突然亡くなったのは二年前の話。
心臓発作を起こし、言葉通りあっけない死だった。
父亡き後、母を絶望の底から救いあげ、愛し、守ったのは美月の実の叔父であり父の弟である和豊だった。
元々敏夫の右腕として専務を務めており、社員からの人望も厚かった和豊が社長に就任するのは、何の違和感もなかった。
献身的に母を支え、仕事にも惜しみない労力を注ぎ、美月にも実の子に向けるほどの曇りない愛情で接した。
美しくまだまだ女盛りの母と、人間の鏡である和豊―。
