大学の門を潜ると、少しキャンパスから離れた場所にある図書館に向かった。
この学園の図書館は3階建てで一つの建物になっており、各階に世界中から取り寄せた専門書が取り揃えらているのだ。
理事長の方針で、いかなる職種にも対応できる人材を育てる事、それをモットーとして揃えられているのだ。
美月は図書館に入ると1階をぐるりと一回りした。
この図書館は各階で内容の違う書籍を揃えている。
3階には職業専門書やビジネス書籍などが置いてある。
その幅は本当に広く、洋書や一般事務の参考書などジャンルは様々だ。
2階には学業関係の書籍が置かれている。
私立中学から大学の過去問、赤本、参考書などこちらも一言に学業書籍とは言えどもかなりの種類がある。
そして1階には一般書籍が置かれている。
小説、ドキュメンタリー書籍、雑誌、マンガ…
なので1階には在学生以外にも幅広い年代の人が多く見られた。
たまに視線を向けながらも、美月は長い脚をゆったりと運び視線を流していく。
何気なく見つめていた本棚の下段。
一冊の本に目が留まる。
目立たない場所にまるでひっそり身を潜めるように、美月を見つめていた。
幼い頃から大好きだったその本に、懐かしさとまるで吸い寄せられるような不思議な感覚の中、視線を止めて長くしなやかな指を伸ばす。
引き寄せられるように指が触れたのは、無機質な紙の感触ではなかった—。