和豊と馨が結婚し、この家で暮らすようになってから、美月は寝に帰るだけの生活になっていた。
あまりにも家にいたがらない美月に、誰もが心配そうに話して聞かせたのだが、美月は一切聞く耳を持たなかった。
心配そうな由美の視線から逃れるように、美月は家を出た―。

大きな家の扉を潜るとまっすぐ大学に戻った。
日曜でも大学は解放されていて、図書館に至っては数々の専門書を取り揃えているので、休日や祝日は一般解放もされている。
視界の中に大きな建物が見え始めると、同じようにキャンパスに行くんであろう女の子達の潜めた声が聞こえる。
「見て！美月さんだ！」
「うわぁ…ラッキー…」
歓声と感嘆が美月を取り巻く。
もう慣れた扱いに、今更美月は眉一つ動かしはしない。