『拝啓、香田美月様

 美月、元気にしていますか?
 私は相変わらず毎日を目まぐるしく過ごしています。
 いつも言っていることだけど、クリエイター志望の人間が集まる場所は毎日熱気と刺激
 に溢れています。
 私もその中の一員として恥じる事のないように、毎日頑張っています。
 美月の家はどうですか?
 相変わらずなのかな…?
 美月の気持ちも分かるけど、献身的なおじさまとおばさまを責めちゃだめよ?
 人間は愛や助け合いがなくては、どんなに強くとも生きてはいけないものよ?
 
 そう言えば話は変わりますが、今度会社でパーティーをするそうですね?
 妹からの手紙に書いてありました。
 他の会社のお偉いさん方も来るパーティーだと書いてあったから、もちろんご令嬢の美 月も強制参加ね?
 貴女の嫌そうな顔が目に浮かぶわ…
 それでね、次の春に貴女の大学にうちの妹が入学することになりました。
 苺を覚えているかしら?
 最後に会ったのは私たちが6歳の時だったから苺はまだ4歳だったわ。
 今度のパーティーで久しぶりに貴女に会えるって、とっても喜んでいたわ。
 そこの大学を選んだのも、貴女に憧れての事らしいから人見知りな苺を助けてもらえる と嬉しいです。
 それでは、また。

                                  桜田 蓮華』

最後まで読み終えると、美月は視線を宙に向けた。
苺…
確かに蓮華にはそんな名前の妹がいた事を思い出した。
蓮華とは密に連絡を取り合っていたものの、妹の苺とは幼い頃に顔を合わせていた記憶すらない。
手紙を仕舞うと、午後の授業に出る為教室に向かった―。