夏樹は短く「サンキュ」と言うと、咲の隣に腰を下ろした。
「ところで咲はいつになったら俺とデートしてくれるんだ?」
グラスを片手に咲の隣で夏樹は軽口を叩く。
咲も怪しげな笑みを浮かべると、そっと夏樹の頬に触れた。
「そうねぇ…夏樹が私を満足させるって約束してくれたら考えてもいいわ…?」
顔を近づけて二人はクスクス笑いあう様子を美月は苦笑いを浮かべて見ていた。
すると二人が同時に顔を美月に向ける。
「…ん?」
美月がすっとんきょうな声で目を見開くと、二人が「「ちょっとー」」と声を揃えた。
「そこは美月も参加しないといけないところでしょー?」
「だよなー?見てみろよ?ギャラリーの皆様が今日も期待してるだろう?」
たくさんの女子たちがあからさまに頬を染め好奇の目でこちらを見ている。
世にも美しく怪しい三角関係…
周りの視線が明らかに美月の出方を待ちわびている。
視線を一度巡らすと、大きな溜息をつき美月は目の前の咲の頬をぐいっと寄せた。
「咲?僕というものがありながら随分な事を言ってくれるんだね?そんなにお仕置きされたいのかな…?」
少し冷ややかで怪しい笑みを浮かべた美月は、それはそれは彫刻の如き美しさで、ギャラリーからは感嘆の溜息と声援が飛ぶのだった。
咲と夏樹はと言えば満足そうな笑みをニヤリと浮かべ、咲に至っては美月に小さく耳打ちするのだった。
「…お仕置きして…?」