「川北さんと仲良くね」



「えっ?」



「だから、川北さんとつきあってもいいよ」



「…」



母の目に涙が浮かんだと思うと、大粒の涙が後から後からこぼれ落ちる。



「お父さんのこと、忘れないでね、じゃないとお父さんがかわいそう」



「…」


母は、何度もうなづく。



「私のこと邪魔になったいつでも言ってね」



「バカ。
琴子は私の一番の宝物だから、邪魔になんかなることない。
それに、これだけは言っておくね。
川北さんとは結婚とかそういうことは考えてないから。
でも、これから琴子も川北さんのことを家族のように思ってほしい」



「…ありがとう。
でも、私の家族は死んだお父さんとお母さんだけだから」



「…わかった」



母は、私のことを抱きしめた。



「…」



すごく温かい。



こんなに気持ちよかったんだ。



私は、しばらく母に抱きしめられていた。