片思いしてます

そして、驚いた顔を見せ、




「どうしたの、急に」



「すいません、ちょっと聞きたくなって」



有川さんにとっては突然だよね。



でも、私は昨日からこのことで頭がいっぱい。




有川さんも、奥さんを5年ほど前に病気で亡くしている。




奥さん大好きだった有川さんは、それから恋人も作らずこのお店に情熱を注ぎこんできた。




母の状況と似ている。




有川さんなら、わかってくれると思った。




母が父を裏切っていると。




「そうだなー、まだ妻が死んで5年だから、この家にもまだ妻の形跡が残っているし、自分の中でも妻の存在が大きいからそんなこと考えたことないなー」




「…時間の問題ですか?」



「うーん。時間がたてば段々と思い出も薄れてくるかもしれないけど…、難しいなー。
俺は、今のこの生活に満足してるから、好きな人をつくる余裕もないし」



有川さんは、考えながら話す。



思い出は薄れてくる…か。



私の父に対する思い出は薄まらないけど…。



家族なのに、母の気持ちがわからない。



1番近くにいる存在なのに…今は1番遠くに感じる。