片思いしてます

リビングに行くと、ソファーに座る母と目が合った。



「お母さんもお風呂に入ってきたら」



「うん…。
琴子…、さっきの話だけど」



母の真剣な顔。



私は、自然と身構えていた。




「…お母さんね、さっきの人とお付き合いさせてもらってるの」



母の目がまっすぐに私を見ている。



「…ちょっと待ってよ。そんな話突然。お付き合いって何?
お父さんはどうするの?」



わけのわからないことを言ってる。



素直に認められなかった。



認められたら、お父さんがかわいそうに感じたから。



「…ごめん。そうだよね。お父さんに悪いよね」



「…」


寂しげに笑う母の目に、涙が浮かんでいるのがわかった。




なんで、泣いてるの?




付き合ってる人のため?




私のため?




お父さんのため?




私にばれちゃったから悪いの?




でも、こそこそ付き合うのも変だよ。




この家は、お父さんがお母さんと私のために残してくれた家なのに、その家の前で誰かとキスをするなんて信じられない。




怒りが込み上げてきた。



無神経すぎる。




私は、そのまま何も言わず自分の部屋に上がった。