その小さな衣料店を営む
老婆に声をかけられたのは
ロビンだった。

店に入ってきた
ロビンの姿を出稼ぎに出た息子に見まごい、
思わず、声にならない声で話かけたのだ。


「あんたのまっくろな髪、よう似とるんよ。あの子も
黒い髪をしとった。
他人の息子と間違えるようでは、
母親失格かもしれんの。」

母親は溜め息をつく。
苦笑混じりの割には、ずいぶん深いため息だ。

「息子さん、今はどちらに?」
おもむろにクリアが尋ねる



「都じゃ。ここから汽車で
三時間。遠いんだか遠くないんだか、
わしにはようわからんよ。
あんたら二人が並んで帰ってきたもんで、
ほんま、べっぴんな嫁さん見つけて
驚かせようとしてくれたかんと、わしはてっきり…。」



クリアはすこし顔を赤く染めていた。
純粋で清潔な
クリアらしかった。

そんな顔をされると、
苦労話の滲むお婆さんには悪いが、
俺も少し照れてしまった。