「お前知ってるか?あのカベのむこう側に何があるのか。」



付き合いのすくない青年にとって、唯一友達と呼べる者、
それがこのジークフリード
だった。



「さあ、想像したことすらないな。」



「相変わらずお前はお堅いやつだな。
いいか、あのカベの外には、
広大で果てしない『世界』が
あるのだ。」



「『世界』だと?
どのくらいでかいんだ。
この壁の内側より広いんだろうな。」



「そんな、俺らが住んでる壁の内側なんて
世界に比べたらこめつぶみたいな
もんだぜ。」



「…」


青年は少し黙りこむ。

この街よりずっと大きな、
誰も知らない世界。
そこには自分の想像も
つかないような光景が
広がっているかもしれない。
なんとも楽しそうな話ではないか。


シラをきっていたが、青年はそんな思いをずっと抱き続けていた。
しかし決して表に出すことはない。
壁の内側で一生を終える事が常識
であったので、ほとんどの人は壁
に外側があることしはら気にしない。


「確かに、『世界』があると
言うのなら、面白い話だ。」




「だろ?お前なら言ってくれると信じてたぜ。
俺はな、一八歳の成人の日に、あのカベを越えるつもりだ。」