壁の向こう側はなんとも不思議な
場所に繋がっていた。
青年は物語や神話に語られる楽園
を連想した。

ジタの街にはない独特な石畳、
女神をかたどった石像…しかし
青年には目先ほどしか見えていない。
楽園には、まるで天がヴェールを
かけたかのように、深い深い霧が
立ち込めていたのだ。


「これでは道を探すことすら難しい…
人は…人はいないのか?」



ふと、視線の隅で何か動いた。
動きを追うと、かろうじて
霧の下から細い足が見える。


「あ、あなたは誰だ?
人…だよな?」



するとその者は、返事を返さず急いで立ち去ってしまった





「あ!待って!」