ああ、もう…。
これ以上あたしに敵を作ってどうするつもりなの、遥。
遥は助けに入ったつもりなのかもしれないけれど、回り回ってとばっちりを食うのは最終的に“姉”であるこのあたしなのだ。
分かっていない。
「ちづ、大丈夫?」
今度呼び出されたとき、文句だけで済まなかったらどうしよう、と思っていると、いつの間にかその遥が目の前にいた。
いかにも心配している風を装い、顔を覗き込むようにしながらあたしの前髪を指でなぞる。
「毎度毎度、俺のせいで悪いね」
「そこまで分かってるならあたしに構わないでくれる? ちっとも嬉しくないのよ、そういうの」
遥の綺麗な指を手で払いながら、あたしは辛辣に言う。
「だいたい、ちゃんと家に帰ってこない遥がいけないんじゃない。お弁当を届けるあたしの身にもなってよ、どれだけ気が重いか」
「なら届けなきゃいいだろ」
「そういうわけにはいかないの。今月ピンチだって言ってたし、もし購買でパンも買えないくらい金欠だったら、今度はお弁当を届けないことに文句を言われるの」