「はぁ…」


彼女たちの後ろ姿を見送りながら、自然、ため息がもれる。

遥とは、血の繋がらない弟だ。

昔からよく女の子にモテる子だったけれど、高校生にもなればそこに恋愛が絡むのは必至で。

今日だって、一晩中帰ってこなかった遥のお弁当を届けに行っただけなのに、この扱い。

まったく。息が詰まる。


――と。

ひゅっ、と一瞬、あたしの左脇を黒いものが通り過ぎていった。

かと思えば。


「ちょっと待ちなよ。住む世界が違うって言うなら西山たちと俺とも違うんじゃない? ちづは家族でそっちは他人。でしょ?」


その黒いものは、西山と呼ばれた彼女たちに近づきながら言う。

呼び止められ振り向いた彼女たちは、みるみる顔をこわばらせ次第に赤面し、うつむく。

…遥だ。

こんな芸当ができるのは。

どこで聞いていたのかは分からないけれど、どうやら話の内容は最初から聞いていたらしい。

呆気に取られていると「それに」と言った遥はこう続ける。


「ちづは、気づいたらもうずっと特別。だからいじめてやんなよ」