Side: 杏 もう涙が止まらないよ。 あんなに言ってくれて意識しない方がおかしいんだ。 あたしはもう投げやりだ。 『ぐすっ…うー』 山下先輩は困った顔をしながら、ゆっくりあたしのもとにやって来て 『なんか…凄いとこ見せちゃったね。ちょっとおいで』 と言ってあたしの腕をそっと掴んで部室に連れてきた。 『部室の鍵ある?』 部室の前に着くと足を止めてあたしに聞いてきた。 あたしはコクンと頷いて、スカートのポケットから鍵を取り出して 先輩の掌にのせた。