春は大急ぎで鞄を持ってくると、慌てて家を出る。
「気を付けていってらっしゃいねぇ」
きっとこの声は、今の2人には聞こえていないだろう。
「…仲がよくて、幸せそうで」
ぽつり、と玄関に残されたおばあちゃん。
視線の先に、もう春達はいないが、じっとその場所を見つめる。
小さい頃は、病気ばかりで。
ろくに幼稚園にも行けなくて、小学生に入ってからも風邪で休んでばかり。
友達こそ1人か2人だったのに……。
もう、春は忘れてしまっているのだろうけど、休んでしまった日は毎日のように泣いていたのよ?
あまり笑わなくて、少し無口で…。
「今じゃ笑顔が耐えなくて、友達もたくさんできて…、おまけに恋人まで」
「……これならもう、おばあちゃんがいなくても、大丈夫ね」
するといきなり咳き込みだし、おばあちゃんはいそいそと部屋へ入った。

