「なんか、乗り尽くしたって感じ…」
「本当…。ちょっと疲れたかも」
時は気が付くと、お昼を回っていた。
それでも、目の前を元気に行き交う子供や親子の姿。
「いいよな、子供は元気でさ」
「あんたもまだまだ子供でしょーがっ」
すかさずツッコミを入れる美香に、また周りが笑顔になる。
「でも…いいなぁ」
ポツリ、と呟く春。
春には小さい頃から両親がいないため、どこかに一緒に出掛けて過ごした思い出がない。
あるとするなら、おばあちゃんと近所を散歩したり、家で一緒にお菓子を作ったり…。
ぼうっと過ぎていく親子達を眺めていると、さっきまでの笑顔はなくなっていた。
「春…」
「…な、なぁ、何か食べないか?あ、ほら!あそこにクレープ屋あるしっ」
「あ、本当だ!…ね、春?一緒にクレープ食べようよ」
しんみりとした空気をどうにかしようと、由紀と美香は笑って見せた。
春も慌てて謝ると、またさっきの笑顔へと戻っていった。
「あんま無理…すんなよな……」
優太のこの言葉が、彼女に届いたかどうかはわからない。
でも、みんなといる時の春は本当に幸せそうで。
例えお母さんとお父さんがいなくても、私にはおばあちゃんや美香、優太、由紀がいる。
優しくて、私に元気をくれる人達。
そんな私は、幸せ者だと思うんだ。
みんなと出会えて、本当によかった…。

