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『あ、もしよかったら家寄っていく?』


ここまで来てもらったのに 家に上げないのも

おかしな話だろう。


『いや。今日は止めとくよ。また今度お邪魔する。』





また今度─ その言葉をユウマから聞けただけで

次があるのだと喜んでしまう。

またユウマに会えるのだと。 こうして話が出来るのだと。



『分かった。じゃあ私は帰るね。』


『あ。送って行くよ。1人じゃ危ないだろう。』


『だーいじょうぶだよ!いつも1人だし。』


『だーめっ! 今日は送るよ。 ほら、行こ』


こうなったユウマは絶対譲らない。─仕方ない




『じゃあエントランスまでお願い。』


『あぁ。任せとけ。さ、帰ろ?』




マンションのエントランスまでなんて大した距離じゃない。


その距離も ユウマと歩けば

─もう少し長ければよかったのに…

と思ってしまう。

さっきまで早く帰りたかった気持ちも 今となっては

─…もう少しユウマと一緒にいたい

そう思うようになっていた…