この街に来て、辛いことも苦しいこともたくさんあった。
けど、あたしには大切な物ができた。
居心地がよくて、あたしがあたしでいられる場所。
みい、大、玲音……奏。
皆があたしの居場所だった。
みんなの言葉に…優しさに、あたしは救われたんだ。
皆と離れるなんて、考えられない。
奏……。
あなたが隣にいない毎日なんて…考えられないんだ。
『パパは…1人でいいの…?』
『パパは大丈夫。
休みの日には様子も見に来るし。
夢花の意思で決めろ。
残るのか、一緒に行くか』
パパは昔からそうだ。
自分のコトなんか二の次で、他人の幸せを優先する。
あたしにとっては、パパだって大切なんだ。
『パパ…時間をちょうだい。
よく考えるから』
『あぁ、分かった。よく考えな』
あたしはパパに時間をもらった。
ゆっくり考える時間を…。
みんなが大切で…みんなが愛しい…
そばにいたい人は、どうして1人じゃないんだろう…?
あたしはこのコトをみいにだけ話した。
みいは、離れたくないと泣いたけど、最後は夢が決めるコトだと言ってくれた。
奏にも、話さなくちゃいけない…。
それには、まだ心が不安定過ぎた。

