奏の家で、ご飯をごちそうになった。
奏ママの特製カレーは変わらずおいしかった。
『この味、懐かしいな〜』
玲音が何かを思い出すようにカレーを味わっていた。
『そういえば、玲音、標準語になっとるな。すっかり都会っ子か?』
奏が少し残念そうに言った。
『向こうに行って直したんだ。
都会っ子…ね。
俺も向こうで色々あったんだ。
俺には島根の方が性に合うな』
玲音は優しく微笑んだけど
瞳の奥はどこか冷たくて…悲しかった。
玲音の心に潜む闇。
でも、それが何なのかはあたしには分からなかった。
『奏は腐っても田舎っ子だよね』
玲音の意見に同感だ。
『俺は、いぃんだが。
都会っ子より、田舎っ子の方が純粋だが!』
どこから、そんな発想が出てくるのか…
あたしは
何も答えずにカレーを食べた。
奏と玲音が
楽しそうに言い合いをしてる。
その声が
どこか、遠くに感じた。
玲音は何を抱えているんだろう…
どうして、悲し気な瞳をするんだろう…
1人で抱えたら、爆発しちゃうよ…
あたしは
1人で抱え込んだ果てに、落ちていった人を知ってる。
人は弱いものだから、誰かがいなきゃ立っていけない。
もう、誰かが落ちていくのは見たくなかった。

