−夢花side−
今日から冬休みだ。
奏は部活があるらしく、朝ごはんを食べ終わると家に帰った。
パパも仕事に行って、家にはあたし1人だった。
途端に孤独に襲われる。
奏の存在は大きくて…
確かにあたしは救われたかもしれない。
けど…
心の奥にぽっかり空いた穴は埋められなかった。
それくらい
ママの死は大きくて…
いつまでたっても
忘れられなかった。
家に閉じこもっていると、壊れてしまいそうで…
あたしは
コートをはおって家を出た。
行くあてもないけれど…
下を向いて歩いていた。
思い出すのは
ママの笑顔…
ママの泣き顔…
ママの優しい声…
ママの叫び声…
幸せな家族…
壊れていく家族…
涙が頬を伝った。
その時―
ドンッ―…!
誰かにぶつかってしまった。
あたしが顔をあげると
綺麗で端整な顔をした男の子が立っていた。
『いってー…、大丈夫!?
って…泣いてんの!?』
そんな大声出さなくたって…
あたしは
即座に涙をふいた。

