−奏side−
夢花の隣の部屋を借りた。
もうそろそろ寝ようかと思って
布団に入ると誰かが泣いてる声がした。
すぐに分かるよ…
この声は夢花だ。
夢花が泣いてる。
俺はベランダに出てみた。
隣の部屋のベランダとは
しきりがあった。
この向こうで夢花が泣いてる。
今すぐ行ってやりたい。
でも、夢花の声で俺が行っても、無意味なコトが分かった。
夢花はかすれた声で
ママ…と何度も呼んでいた。
会いたい…
寂しい…
そんな感情は
夢花にはもう無いと思ってた。
俺がそばにいるから、
夢花は寂しくなんてないんだって勝手に思い込んでいた。
俺の前で夢花は笑ってた。
だから、もう平気だって…
夢花の傷は癒えたんだって…
そう思ってた。
でも、違かったんだな。
こうして夢花は泣いてたんだ。
1人で悲しみを抱えて
もう会えない母親を想って
たった1人で…
泣いてたんだ…ずっと…
俺は何も気付かずに
夢花の笑顔が好きだと、何度も言った。
その言葉が
どれだけ夢花を苦しめたのか…
俺は…何をしてるんだろう…

