『いらっしゃいませ』
リビングの方から
フリルのついたエプロンを着た
女の人が出てきた。
『あさ美さん、久し振り』
『南さん!優奈さんも!
久し振りねぇ』
この人は山川さんの奥さん…
だと思われる。
ママとかパパと年は変わらない
気がする。
乙女チックな人だった。
声も柔らかくて甘い。
うちのママと張り合うくらい
きれいだった。
『あら、もしかして夢花ちゃん?』
あさ美さん…と呼ばれた
山川さんの奥さんは
あたしを見るとそう言った。
『はい。 南 夢花です』
『大きくなったのね。
かわいい〜』
あさ美さんは女子高生みたいな
口調でそう言った。
『うちのチビちゃんもリビングにいるけん、遠慮なく、くつろいでいってね』
あたしたちはあさ美さんにリビングに通された。
白っぽい部屋がすごくきれいだった。
『奏!かわいこちゃんが来たわよ』
あさ美さんはソファに座っていた男の子に声をかけた。
『かわいこちゃん?』
男の子はあたしの方に振り返った。
意思の強そうな目があたしをとらえる。
『見ない顔だな』
『今日ひっこしてきたから』
『名前は?』
『南 夢花』
『夢花? 芸能人みたいな名前しとるな。 俺は山川 奏。小6!
よろしくな』
『あたしも小6だよ。よろしくね』
『分からないこといっぱいあるけん! 俺が教えちゃる!』
『ありがとう』
これが奏との出逢いだった。
奏のおかげで友だちもたくさんできた。
初めは退屈だと思っていた田舎暮らしも
奏のおかげで楽しめるようになってきた。
あたしたちはあっという間に
仲良くなった。