君の隣





―奏side―




目を覚ますと


そこには白い天井があった。



体がズキズキして、思うように動かない。



そうだ、俺は車にひかれたんだ。



『奏、起きたのか』





そう声をかけてきたのは玲音だった。





『玲音…?来てくれたんか?』





『あぁ。具合は?』





『身体中痛いけど、意外と元気』





『すげぇ、生命力だな』






『だろ…? 夢の中で声を聞いた気がしたんだが。

夢花に何度も名前を呼ばれた気がした。

あいつ、来てねぇよな?』





ただの勘違いかもしれないけど、ずっと気になってた。





『さぁ、よく分からねぇ』





玲音は何かを誤魔化したような口調だった。



だてに親友やってねぇからすぐ分かる。




けど、俺は何も言わなかった。




コンコン―



ドアを叩く音がして、小さな影が入ってきた。




『龍太…大丈夫か?』





龍太を助けようとして、俺はひかれた。



でも、龍太が元気そうで安心した。




『奏コーチ、僕のせいでごめんなさい…』





『お前のせいじゃない。むしろ、龍太が助かって嬉しいが』





『…お姉ちゃんと同じコト言っとる』





『…お姉ちゃん?』





『来たんだが。奏コーチの大切なお姉ちゃん。

奏コーチはお姉ちゃんのおかげで目が覚めたんだけん。

お姉ちゃん、言っちょった。

きっと、奏は僕が生きてて嬉しいって…奏はそういう人だって』




…夢花。




俺、お前に助けられたんだ。



『玲音…』




玲音は目をそらして言った。




『黙ってろって言われてた。ごめん』





『夢花は…?』





『すぐに仕事戻ったよ』





今すぐに会いたかった。



会って、抱き締めたかった。