『奏…、夢花の声が聞こえたのかもな…。 やっぱ、2人は繋がってるんだ。誰も敵わないよ』
『…よかった。このまま死んじゃったらあたし、どうなってたか分からなかった』
『大丈夫だ。奏は殺しても死なねぇよ。奏は強い』
『…うん』
『お姉ちゃん、ありがとう。
奏コーチを助けてくれて』
男の子は真っ赤になった目でそう言った。
『いいの。これからも、サッカーがんばってね』
あたしは、その場から去った。
玲音は奏が気付くまでいれば、と言ったけど
これ以上はいちゃいけない気がした。
あたしは、帰らなくちゃいけない。
会社に帰ると、エリカさんが心配そうに駆け寄ってきた。
『大丈夫だったの…!?』
『何とか、意識は取り戻しました』
『彼のそばにいなくていぃの…?』
『あたしには、帰る場所がありますから』
『夢ちゃん、自分に嘘ついてない?』
『これで…いいんです』
エリカさんはそれ以上、何も聞いてこなかった。
多分、この人は全て分かってる。
あたしが強がってることも
あたしの目に涙がたまってることも
エリカさんには、敵わない。

