あたしはガラス越しに奏の名前を呼んだ。
『奏…目を開けて。奏を待ってる人がいっぱいいるから…』
奏はピクリとも動かない。
中から、お医者さんが出てきた。
玲音がその医者に駆け寄った。
『奏は…?』
『我々ができることは全てしました。 後は、彼の意識が戻ればいいのですが…。
もう、彼の生命力にかけるしかありません』
『ありがとうございます』
玲音は頭を下げた。
『あの…意識、戻りますよね…?』
あたしの震えた声が響いた。
『何とも言えません…。ですが、呼びかけて下さい。
彼は、暗闇の中でさ迷っています。
あなたが呼びかけて、こっちに引き戻すんです』
あたしは、ガラスの向こうに通された。
奏の枕元に椅子をおいて、そこに腰かけた。
『奏…、一ヶ月前今度こそ本当に会えないかと思った。
けど、奏がこんな怪我するから、会っちゃったじゃん。
奏はいつもそうでしょ。
幸せになって欲しいのに、他人のコトばっかり。
でも、あたし…
奏がこんな人じゃなかったら、好きになってなかったよ。
きっと…別の人に恋をしてた。

