病院に着いた。
そこは有名な大きい病院。
それがあたしをいっそう不安にさせる。
『山川 奏の友人です。どこにいますか!?』
玲音が早口で受付の人に言った。
『山川さんの!山川さんは緊急治療室にいらっしゃいます。今すぐに行ってさしあげて下さい』
あたしたちは、走って緊急治療室に向かった。
その中には傷だらけでたくさんの機械につながれた奏がいた。
目を閉じたままで、動かない。
治療室の前にあるソファで男の子がなきじゃくっていた。
奏は、子どもたちとのサッカー合宿で東京に来ていたらしい。
そして、この子が道路に飛び出して車にひかれそうになったのを助けようとした。
この子はかすり傷で済んだけど、奏は車にはね飛ばされた。
『奏コーチは……僕を助けようとして……ひかれたんだけん。
僕の……せいだが』
あたしはその子の頭を撫でた。
『奏は、きっと元気になるから。
このまま死んじゃうような人じゃない。
君を助けたコトだって、奏はきっと良かったと思ってる。
奏は、強いから』
『…お姉ちゃん、奏コーチの大切な人?
奏コーチは言っちょった。
“大切な人がいれば、がんばれるんだ”って。
誰?って聞くといつも言うんだが。
“遠くでがんばってる人”って』
涙が出た。
大切な人がいれば、がんばれる。
ずっと、そう思っていてくれたんだね…。
奏…目を覚まして。
あたしにまた笑いかけてよ…。

