朝、10時の海は寒い。
雪が積もっていて、歩くたびに足跡がつく。
俺は階段の雪をどけた。
そこに座って待っていると、夢花が俺の名前を呼んだ。
この感じさえ懐かしい。
名前を呼ばれる、そんな当たり前のコトが懐かしくて懐かしくてしょうがない。
他愛のない会話を交わす。
そして、俺は夢花に思いを告げた。
夢花に相手がいるのは聞いていた。
けど、このまま、また会えなくなるのは嫌だったから。
でも、俺が思っていたより夢花はずっと大人だった。
ちゃんと前を見て生きてた。
何だか、自分が情けなくて…
夢花にも申し訳なく思えた。
夢花の目に涙がたまってた。
けど、一生懸命、過去を忘れようとして、前を向いて…強くなれてる。
もぅ、夢花の描く未来に俺はいない。
それなら、俺も夢花を忘れなくちゃいけないんだ。
もう、本当に会えないかもしれない。
俺は夢花の頭を撫でた。
ごめんね、と
ありがとな、と
幸せにな、と
たくさんの思いを込めた。
背中から、夢花の泣き声が聞こえた。

