君の隣





君は驚いたように目を丸くした。



一緒に話していた人たちに何かを言ってから、ゆっくりとこっちに歩み寄ってくる。





みいは気を遣ったのか、少し離れた場所で友達と話していた。





『…久しぶり、だな』





ぎこちなく、奏が笑った。





『…うん。なんか、大人っぽくなったね』





『夢花も。綺麗になったな』





久しぶりに、奏に名前を呼ばれて胸がキュンとした。





『…またまた』





何だか時間が戻ったみたい。



すごく、久しぶりの笑顔。




あたしたちは………



『奏くん…!』




いきなり、奏とあたしの間を高くてふわふわした声が引き裂いた。



今は、その声を聞きたくなかった。



少しだけでもいいから、夢を見させて欲しかった。




莉乃は奏の隣に寄り添うように立った。




その二人の距離が、辛い。



人のコト言えないけど、奏の隣には莉乃がいる。




あたしの特等席だった。




その場所で、幸せな気持ちも辛い気持ちも知った。




大好きな場所だった。




そっか…



もう、あたしの居場所じゃないんだ。