『夢花、来月からパパの仕事の都合で島根に行くことになったの』
『え?島根?』
まだ小学6年生だったあたしでもそれがどういうことか理解できた。
今いる場所を離れる。
仲がいい友だちとも離れる。
そして新しい場所で生活する。
不安でいっぱいだ。
でも、あたしが反抗したところでパパの転勤が無くなるわけないことも分かった。
だからあたしは大人しく島根についていくことにした。
車で何時間かゆられ新しい家についた。
荷物はもうすでに届いていた。
赤い屋根が特徴の大きな一軒家。
中に入ると新しい木のにおいがした。
三階の窓から外を見るとそこには見慣れない景色。
前いたところとはまるで違う。
あるものといえば、田圃や畑。
回りは山でぐるっと囲まれている。
線路に通っているのは小さな電車。
本屋さんもコンビニもないような田舎の町。
どう生活していけばいいのか見当がつかなかった。
明日から2学期が始まるから
新しい学校で挨拶しなきゃいけない。
友だちなんてできるの?
一気に不安に襲われた。
『夢花〜!これからお世話になる人に挨拶しに行くからついてきなさ〜い』
あたしはママに言われる通りに大人しくついていった。
少しだけ歩いて一軒家の前でパパとママの足が止まった。