ボーッとしていると、ドンっと女の人にぶつかってしまった。
『すいません』
あたしはそう言いながら、女の人が落とした荷物を拾った。
『いいのよ、あたしがぶつかっちゃったんだから』
そう言って顔をあげた女の人を見て、あたしは目を丸くした。
すごくきれいだった。
年はいくつくらいか分からない。
30代にも見えるし、20代にも見える。
上品な化粧をしていて、落ち着いた雰囲気の素敵な人。
『あたし、何かおかしい?』
首を傾げる女の人にあたしは首をふった。
『きれいだな…って』
思わず口に出していた。
だって、本当に綺麗な人だった。
『あら…、おかしいコト言うのね、今時の子は』
女の人は口元を緩めた。
『知ってる…?女は綺麗になりたいっていう気持ちがあれば皆、綺麗になれるの。
よければ、うちに遊びに来ない?すぐそこなの』
そう言って、指差した先には大きなビルが立っていた。
そこは聞いたことのある名前のアパレル社。
あたしは、その人に惹かれて行ってみるコトにした。

