君の隣





祭り当日―




待ち合わせ場所につくと、もう隼希が待っていた。




『ごめん、遅れた…?』




『大丈夫。俺が早く来すぎちゃっただけだから…。行こっか』




隼希はあたしの歩幅に合わせて歩いてくれた。




祭りの会場につくと、そこは人でごった返していた。




『すごい人だな…』




『うん。はぐれちゃいそう』




あたしがそう言うと、隼希は腕を差し出した。




『つかまってろよ。はぐれないだろ?』




隼希はサラッと言ったけど…


言われた方はテンパった。




『う…ん』




隼希の腕にそっと捕まった。




でも、後悔した。



その腕の感触が奏に似てて…奏との思い出が頭を駆け巡ってしまったから。





『どぅした?』




様子がおかしいあたしに声をかけてくれた隼希にあたしは笑顔で首をふった。



『何でもないよ』と…。




何でもない。


隼希に言ってるのに、自分に言い聞かせるみたいに心の中で何度も何度も呟いた。





もぅ、忘れなきゃいけない。