君の隣





『じゃぁ、あたし帰るね』




佐伯が部屋を出ていこうとして、俺は声をかけていた。




『ぁ、まだいれば…?宿題のプリントまだやってないけん。教えてくれや』




佐伯は、顔を崩して笑うと分かった、と言った。




プリントが終わっても、佐伯は帰らなかった。



俺も暇だったし、佐伯も暇だったんだろう。



学校の話をしたり、テレビゲームで対決したりして遊んだ。





その間に、ふと頭をよぎるのは夢花の存在だった。



こうやって、よく二人で休日を過ごした。



だんだん、夢花への気持ちじゃない温かい気持ちが自分の中に芽生えてきてるのは分かる。




けど、怖いんだ。



前に進んでも夢花のコトは忘れられないと思うから。



まだ俺の中に夢花がいるから。




目の前で笑う佐伯の気持ちを俺は受け入れられるんだろうか…?




きっと、俺は知らないうちに佐伯を傷つけてる。



はっきりしない俺の気持ちに佐伯は戸惑ってるんだと思う。




自分で自分が情けない。




夢花はもう俺を忘れたかもしれない。



それなのに、俺は何をしてるんだよ。



佐伯まで傷つけてる。




俺は人を傷つけるコトが得意だ。