今は冬休み。
雪がどかどか降って、部活もできない。
俺は毎日家で暇をしていた。
玲音は今回の冬休みは帰ってこないらしい。
大とみいは二人で仲良くしてるから邪魔はできない。
寝転がりながら、テレビを見ているとインターホンがなった。
こんな雪の中誰だ、と思いながら俺は玄関に向かった。
親は仲がよくて冬休み中ずっと、旅行に行っている。
だから、家には俺だけだった。
『…はい?』
『佐伯だけど…奏くん?』
『佐伯…?』
俺は驚きながらもドアを開けた。
そこには、ファーのついた白いコートを着た佐伯が立っていた。
『ごめんね、いきなり』
『…どげした?寒いけん、中入れや』
俺は佐伯をリビングに入れた。
『これ、作りすぎちゃったけん。あげようと思って』
そう言って、佐伯は紙袋を机に置いた。
『何かや…?』
紙袋の中を覗くと、微かな香りがした。
それは、タッパの中に入ったビーフシチューだった。
『佐伯が作ったんか…?』
『うん、お母さんに教えてもらいながらね。よかったら、食べて。
お母さん、旅行に行ってるって聞いたけん。
自分で食事用意するのは大変だが』
『サンキューな、助かる』
佐伯は嬉しそうに頷いた。
俺は気づいてたんだ。
佐伯が俺を想ってくれてるコトも。
だって、佐伯は学校でもすごくモテるのに、俺のコトばかり気にしてくれた。
それは寂しい俺への同情ではないと、ちゃんと分かっていた。
純粋な気持ちだと。
それなのに知らないふりをしたんだ。
そして
また人を傷つけた。

